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方針

地球上の水は、個体、液体、気体の姿に形を変えながら、地球を循環し、人類の活動を絶えず支えています。地球の表面の70%は水で覆われており、そのうち97.5%は塩水です。残りの2.5%の淡水が企業活動を含む人類の活動を支えていますが、淡水もその約4分の3が氷河等の状態で凍結していることから、実際に人類が利用できる淡水の量は全体の1%にも満たない量となります。世界は、国連が持続可能な開発目標(SDGs)の中において、全ての人々への安全な水の確保を目指しており、各国も、企業の事業活動等の経済活動を通じて、水へのアクセスを含む、より豊かな生活の実現を目指しています。経済規模と水の使用量は密接な相関関係にあることから、企業は、地球の大切な資源の一つである水を効率よく適切に使用し、また、事業を通じて、水問題に関わる課題解決を目指す必要があります。

方針

当社は、1996年に制定し、2017年に改定した環境憲章の中で、「資源(水)の持続可能な利用」に努める旨を明確にしています。グローバルかつ、多岐にわたる事業を展開する当社グループでは、水は事業活動に不可欠なものであり、マテリアリティ「自然資本の保全と有効活用」の下、その持続可能な利用は全事業活動において必ず考慮されるべき事項の一つであると認識しています。具体的には、事業活動におけるリスクと機会を適時把握し、また、持続可能な利用方法を追求することを目的に、事業活動の中で適切な量の利用、リサイクル、再利用、排水処理を徹底するとともに、利用効率の改善、使用量の削減に取り組みます。さらに、事業を通して水に関連するインフラ整備、水問題の解決に資する総合水事業等を展開し、世界の水に関する課題の解決に貢献していきます。

株式会社ディ・エフ・エフ, サステナビリティ・CSR部 サステナビリティ企画チーム(PQ-C)

目標

目標

限られた資源である水の使用量を削減することを目的に、当社の本店オフィスにおける水の使用量については、2023年度は前年度使用量以下とすることを目標とし、使用量の削減に取り組んでいきます。また、当社の全ての事業投資先が事業活動を通じて取水・排水・リサイクルする量を把握することを目的に、サステナビリティ調査を実施し、回答率100%を達成するとともに、その増減の分析を進めています。

サステナビリティ・CSR部 サステナビリティ企画チーム(PQ-C)

体制

体制

所管役員 小林 健司(執行役員、コーポレート担当役員(CSEO))
審議機関
(経営意思決定機関である社長室会の下部委員会)
サステナビリティ・CSR委員会
委員会で審議された水資源に関わる重要事項は、社長室会にて機関決定され、所定の基準に基づき、取締役会に付議・報告されています。
事務局 サステナビリティ部
参照
サステナビリティ推進体制図

リスク管理

当社では、投融資案件の審査に際し、経済的側面だけでなくESGの観点も重要視して、総合的に審議・検討しています。水資源の観点では、排水規制・取水制限等の環境規制の遵守状況の確認に加え(規制リスクの検証)、取水に係る周辺住民との共生および地域社会や生物多様性への影響、気候変動が淡水環境に与える影響(物理的リスクの検証)等について精査の上、意思決定を行う審査体制を整備しています。この際、特に水ストレスが高いとみられる地域での事業の場合、外部の視点も取り入れることを目的に、WRI(世界資源研究所)のAqueductを審査に活用しています。新規・撤退案件の審査のみならず、既存事業投資先の事業経営をモニタリングし、改善に資するように努めています。
また、環境・社会性面のリスクが高いと判断した商材については、当社の人権・労働問題・地球環境等への取り組みの方針となる「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」の遵守状況を確認するためのサプライヤーに対するアンケート調査を毎年実施しています。その項目として、地域コミュニティや生態系への影響の配慮、河川等の汚染防止に関する方針・戦略・指針の有無、水使用量の削減目標設定やそのモニタリング有無等、水に関する調査を実施し、内容を確認しています。(詳細はサプライチェーン・マネジメントをご参照ください)。

参照
当社における人権・環境デューデリジェンス

水ストレス分析

水使用量の削減に向けて、全社的な取り組みに加えて優先すべき削減対象を特定する為、取水量の多い事業投資先を対象として、水ストレス分析を実施しました。
分析プロセス及び結果の一部は以下の通りです。

分析プロセス
  1. 当社事業投資先の取水量上位20社(当社支配力基準取水量全体の約99.2%を網羅)を特定。
  2. WRI(世界水資源研究所)の水ストレス分析ツールAqueductを活用し、特定した20社の所在地が水ストレス地域に当たるかを調査。
  3. 高ストレス地域(High以上)に所在する事業において、水使用量の削減取組みの実施や削減目標を策定。

分析プロセス

分析結果及び削減目標の策定

タイでタピオカ澱粉製造・加工事業を行う事業投資先が、Aqueductにおいて水ストレスHighに該当する地域に所在することを特定しました。
同社では、精密ろ過膜等を逆洗処理した際の水を原水池に戻し、再利用する取組みを実施しており、水の使用量削減の為、再利用率10%を目標として設定しています。

サステナビリティ・CSR部 サステナビリティ企画チーム(PQ-C), 翻訳会社

取り組み

取り組み

水利用改善の取り組み

Los Bronces銅鉱山

当社は、チリやペルーにおいて、銅鉱山事業を行っています。多量の水が必要になる事業であるため、各鉱山の操業プロセスにおいて水使用効率を最大化すべく技術導入を推進し、新規取水量の削減を図る取り組みを行っています。Anglo American社と共に推進するLos Bronces銅鉱山事業(チリ首都州に所在)では、生産工程で発生する水のおよそ80%を鉱山内で再利用しており、これは総水使用量の45%に相当します。また、排滓からの水分抽出・再利用率を高める取り組みや、第三者から調達した産業排水や処理済下水の利活用等の施策も進めています。さらに今般、長期安定的な操業用水の確保に向け、2025年からの海淡水調達契約を締結しており、凡そ20,000名が居住する周辺コミュニティへの給水も予定しています。

水使用量削減の取り組み

Escondida銅鉱山

当社の主要投資先の一つであるEscondida銅鉱山は、チリ北部の土漠地帯に位置する世界最大の生産量を誇る銅鉱山です。Escondida銅鉱山では、選鉱プロセス等で利用する水の使用量を節水や再利用等を通じて削減するとともに、これまでに約40億米ドルを投じた世界最大規模の処理・送水能力を有する海水淡水化プラントの建設により、2019年末以降は地下水から取水せずに水所要量を全量賄っています。近年チリでは渇水に伴う水不足が課題となる中、今後も環境保護や地域社会共生に注力しつつ、事業を推進していきます。

Escondida銅鉱山

東洋冷蔵㈱

当社子会社の東洋冷蔵㈱では、生産過程で用いる水資源について、使用量を削減するとともに、汚濁物質が外部に流出しないよう予防措置を取ることを環境方針に掲げ、単年度・中期の水資源使用量の削減目標を設定し、削減活動に取り組んでいます。具体的には、水使用量の大きい工場および関連設備において、使用量や排出量を集計し、毎月評価見直しを行い、節水につなげ、環境負荷の低減を目指しています。また、水使用量削減の取り組み以外にも、CO2や廃棄物排出量の削減、食品廃棄物等の再生利用等実施率においても目標設定を行い、PDCAサイクルを通じた継続的改善に努めています。

東洋冷蔵㈱

参照
環境経営レポート(目標詳細、各種データ、取り組み状況は、こちらをご覧ください。)

Olam社

当社関連会社のOlam社は、2013年に同社の農業・製造事業等における水使用量の削減を公約しています。具体的な削減の取り組み事例としては、米国の乾燥タマネギ事業において水分含有率の低いタマネギの開発や農家と共同でのかんがい効率化の実現により、過去10年間で270億リットルの水使用量削減に成功しました。また、農業用水の過剰な汲み上げやかんがい等による地下水の枯渇が問題視されている中、米国のナッツ事業においてはカリフォルニア州の水道公社とパートナーシップを組み、2019年に3つのプロジェクトを通して12億リットルの地下水涵養を実現している他、融雪時の水の涵養量を最大化するための取り組み等を推進しています。同社は、これらの個別プロジェクトとは別に、常に各事業においてデジタル技術の活用等を通じた水使用量の削減を目指しており、結果として2021年度のトン当たり使用量は前年度比約15%の削減を達成しています。

加えて、2022年に米国農務省森林局、米国森林財団、ユニリーバ社と共に、水資源の保全および深刻な山火事の危険性を軽減するために、米国カリフォルニア州のパインフラッツ流域内の森林の回復力や保水力の向上に焦点を当てた取り組みにおいて提携しました。本取り組みによって年間約25億リットルの水資源の回復および8万トンの二酸化炭素の削減が期待されています。

Almond
Onion
参照
Olam社水使用量削減の取り組み詳細については、以下同社ウェブをご参照ください。
Olam Priority Areas, Water
https://www.olamgroup.com/sustainability/sustainability-framework/priority-areas/water.html

水ストレス地域での取り組み

海水淡水化プロジェクト

当社は、チリのアタカマ砂漠や中東カタールといった渇水地域において、海水淡水化プロジェクトを行い、各地域の水ストレス軽減に貢献しています。例えば、深刻な地下水位の低下に直面し、地域住民や農業への配慮から地下水の代替水源が求められているチリ北部において、海水淡水化プラントで造水した淡水を鉱山、農地等に安定的に供給しています。また、経済発展と人口増に伴う水需要を満たすために、カタール電力・水公社に対して25年にわたって2520MWの発電および90万トン/日(同国造水量の約35%)の給水をする発電・造水事業を展開し、カタール政府と協働してカタールの発展に貢献しています。

カタール UmmAlHoulPower
カタール Umm Al Houl Power

事業を通じた取り組み

生活水準の向上に伴い世界の水使用量が人口増加率を上回り飛躍的に増大してきた結果、一部の地域では水不足が深刻化しています。衛生的な水を安定供給していく水事業は、人類の生存や都市の存続にとって不可欠となっています。当社は、事業を通じて水に関連するインフラ整備、水問題の解決に資する総合水事業等を展開し、世界の水に関する課題の解決に貢献しています。

Metito Holdings Limited

当社関連会社のMetito社は、中東/アフリカ/アジア地域を中心に上下水および排水処理施設や海水淡水化施設等の建設から事業投資・運営まで幅広く手掛ける総合水エンジニアリング企業で、地域の水不足や水インフラ整備の遅れ等の解消に向け、適切な水ソリューションを提供し、人々の生活環境向上と地域環境の保全を推進しています。具体的には、1999年以降エジプト紅海沿岸の渇水地域において、海水淡水化による水供給事業を長期にわたって運営している他、同国政府向けに大型海水淡水化施設の建設を行っており、地域の水インフラ整備に貢献しています。また、渇水地域であるカタールにて海水淡水化施設を建設の上、長期にわたり運転を手掛けており、地域の安定的な水供給に貢献しています。

エジプトAl Yosr海水淡水化施設
エジプト Al Yosr 海水淡水化施設

水ing㈱

当社関連会社の水ing㈱は、上下水道施設の設計・施工や運転・維持管理サービスの提供等の国内水道事業に取り組んでいます。具体的には、兵庫県神戸市の東灘下水処理場にて発生する下水汚泥から、肥料の原料となるリンを回収する事業を推進し、地産地消/循環型の仕組みによる資源の有効活用を図っています(令和2年度国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」イノベーション部門受賞)。また、富山県黒部市で下水道バイオマスエネルギー利活用施設のPFI事業を推進し、資金調達から設計・建設・維持管理・運営までを担っています。下水汚泥をコーヒーかすと混ぜ合わせ、バイオガスを取り出し、発電や汚泥の乾燥処理に活用する他、乾燥汚泥は石炭の代替燃料や肥料原料として有効利用しています(平成23年度国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」サスティナブル活動部門受賞)。

黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設
黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設

同社は、これまで英国、日本、豪州、フィリピン、チリ、およびアジア・中東・アフリカ諸国で水事業の実績を重ねてきました。これからも民間資金や民間技術を活用することで、より効率的な運営と質の高い水道サービスの提供を行うとともに、水不足や水インフラ整備の遅れ等の解消に向け、地域に適切な水ソリューションを提供して、人々の生活環境向上と地域環境の保全を実現していきます。

サステナビリティ・CSR部 サステナビリティ企画チーム(PQ-C), 電力ソリューショングループCEOオフィス (EZ-K), 金属資源グループCEOオフィス(KZ-B), 食品産業グループCEOオフィス 経営計画ユニット(LI-F), 翻訳会社

外部との協働

外部との協働

CDPへの回答

当社は世界中のさまざまなステークホルダーに対して、ESGに関する取り組みについて積極的に情報発信することに努めています。CDPは世界中の機関投資家等の要請を受けて、企業の環境情報開示を促進する活動を実施し、気候変動対策等の環境情報関して世界最大のデータベースを保有する英国ベースの国際環境NGOで、当社は2011年度から、企業の水マネジメントを評価するCDP Waterの質問書に回答しています。

環境省ウォータープロジェクトへの参加

当社は、健全な水循環の維持または回復を目的とした取り組みの促進等を推進する官民連携プロジェクトである「ウォータープロジェクト」2014年に、環境省により「水循環基本法」に基づき発足。水循環や水環境の保全に向けた民間企業による自発的・主体的取り組みを促進するとともに、官民連携の機会の場を創出するプロジェクト。に参加し、水リスクや水に関する取り組みについての他社との情報共有を通じて当社における取り組みの推進を検討しています。

ウォータープロジェクト

健全な水循環の維持・回復に向けて、事業・社会貢献における活動を推進するとともに各取り組みや水の重要性に関し、社内外広報を通じて発信しています。

NGOとの協働

当社は、環境保護、環境に関する教育研究および貧困緩和を促進することを目的に、三菱商事米州財団(MCFA)および三菱商事欧州アフリカ基金(MCFEA)を通じて、米州や欧州、アフリカの環境および持続可能な開発プロジェクトを支援しています。支援は、Forest Trends、International Union for Conservation of Nature(IUCN)等多岐にわたるパートナー組織を通じて行っています。

サステナビリティ・CSR部 サステナビリティ企画チーム(PQ-C), サステナビリティ・CSR部 復興支援チーム(PQ-F), サステナビリティ・CSR部 社会貢献チーム(PQ-P), 翻訳会社