当社は、「地域課題の解決とコミュニティとの共生」をマテリアリティの一つに掲げています。事業活動や社会貢献活動等を通じて地域の発展に寄与するとともに、事業現場においては地域・コミュニティとの共生を図ります。
当社は、事業推進上、コミュニティとの関係構築が重要であると認識しており、「地域課題の解決とコミュニティとの共生」をマテリアリティの一つとしています。また、事業を通じた雇用創出・地域開発、コミュニティからの資材調達等、地域と共に繁栄を分かち合うことと、地域への負の影響を最小化することとしています。地域と共に発展することは、当社が事業を推進し、経済価値を創出することと同様に重要であり、経済価値・社会価値・環境価値の同時実現をうたう当社の精神そのものです。
当社は、事業を行う国・地域との良好な関係を構築し、これら国・地域の持続可能な発展に貢献する上で、現地雇用や現地調達が重要な役割を果たすという考え方※ISO26000等※に賛同しています。事業地域周辺からの従業員雇用や物品・サービスの調達は、域内の人材育成や地域社会・経済の活性化に通じ、地域の持続可能な発展に寄与すると認識しています。当社は、世界のさまざまな国・地域で事業活動を行う上で、この考え方に基づき現地雇用・現地調達等の事業活動を通じた経済貢献や社会貢献活動等に努め、地域社会との共存共栄を目指します。
当社は、鉱山事業・石油ガス事業において、閉山・廃山・廃坑時における環境・社会への影響を最小化することが重要と考えます。これらの事業の推進に当たっては、将来の閉山等に向けた対応を円滑かつ適切に行うために、事業検討・操業期間中から事業活動を行う国・地域の法律や国際的な取り決め※「 持続可能な開発のための10原則」(国際金属・鉱業評議会)等※に定められた環境影響評価の実施に加え、行政、地域住民等ステークホルダーとの対話等を通じて、適切な閉山計画の策定や、必要なリハビリテーション等に取り組みます。閉山・廃山・廃抗時においては、閉山計画に則り、適切な対応を行い、環境・社会への影響の最小化に努めます。
所管役員 | 小林 健司(執行役員、コーポレート担当役員(CSEO)) |
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審議機関 (経営意思決定機関である社長室会の下部委員会) |
サステナビリティ・CSR委員会 委員会で審議されたコミュニティに関わる重要事項は、社長室会にて機関決定され、所定の基準に基づき、取締役会に付議・報告されています。 |
事務局 | サステナビリティ部 |
当社では投融資案件の審査に際し、経済的側面だけでなく、ESGの観点を重要視し、地域社会・経済の活性化の視点、先住民や文化遺産等の周囲の状況や関連する対応も踏まえ、総合的に審議・検討しています。また、新規・撤退案件の審査のみならず、既存事業投資先の事業経営をモニタリングし、改善に資するように努めています。
当社所属 高橋選手 講演会の様子
当社の持続可能な成長は、持続可能な社会の実現を追求することなしに果たし得ないとの考えの下、事業と社会貢献活動の両輪によりマテリアリティに取り組みます。社会貢献活動においては、「インクルーシブ社会の実現」「次世代の育成・自立」「環境の保全」の3つの軸に沿った活動、および「災害支援(東日本大震災復興支援を含む)」を実施しています。具体的な取り組みに当たっては、当社らしさ、社員の自発的な参加、そして継続性を重視・尊重しながら、社会に役立つ事業価値を創出していきます。
当社は、社員一人ひとりが社会貢献に対する意識を高めていくことを重要と考え、ボランティア休暇制度や昼休みを利用した社内で行われるボランティアプログラムの開催等、社員のボランティア活動への参加を促すさまざまな取り組みを進めています。また、2011年の東日本大震災直後から復興支援活動を実施し、2020年度までに延べ4,958名の社員がボランティアとして参加しました。
社員のボランティア活動は、トークンという仮想通貨に換算(活動1回につき1トークン=500円)し、会社が福祉、教育、環境関連等の活動に取り組むNPOや財団に寄附する仕組みを整備しています。トークンは会社が指定するボランティアだけではなく、社員の自発的な活動でも取得可能としています。また、年間最大5日間のボランティア休暇を社員に認めています。
当社では、長年にわたり取り組んできた「パラスポーツ支援」をさらに充実させるため、「DREAM AS ONE.」プロジェクトを2014年に立ち上げました。2022年度には、障がい児向けスポーツ教室、パラアスリートによるパラスポーツ体験会等を約14回行いました。また、当社所属のパラアスリートは現在4名、そして奨学金を支給していた学生のパラアスリートは8人(延べ10人)名で、それぞれ夢に向かって活動を続けています。また、全国の小・中・高等学校や自治体等で所属アスリートによるパラスポーツ・障がい理解の講演会を積極的に行っています。
当社が社会貢献活動の一環として、次世代を担うアーティストの支援と育成を目的に2008年から実施している三菱商事アート・ゲート・プログラム。学生には奨学金、若手および中堅アーティストには資金援助だけでなく、美術有識者によるメンタリングやラーニングを取り入れて、キャリアステージに応じた創作活動の発展をサポートしています。
スカラシップ:20名
芸術文化分野で学ぶ学生を対象に奨学金を単年度で支給。アーティストとして自立した活動を希望しながらも、経済的な理由で困難を強いられている学生をサポート。
ブレイクスルー:6名(組)
客観的な視点での作品批評を必要とする若手アーティストに対し約2年にわたりメンタリングや学びの機会、展覧会の場を提供。知見を広め、作品・コンセプトづくりにつながる展開を支援。
アクティベーション:3名(組)
近年の社会状況に向き合う中堅アーティストの多様な活動を約2年にわたりサポート。国内外の専門家や研究機関、技術者らとの領域横断的な協働をはじめ、それぞれのニーズにあわせた柔軟な支援を通して、思考や表現を磨く機会を提供。
財団・基金 | 活動内容 | 設立年・拠出額(累計) |
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三菱商事復興支援財団 | 奨学金、助成金、産業復興・雇用創出支援を通じた、東日本大震災の被災地域の復興支援活動 | 2012年設立 約135億円(三菱商事東日本大震災復興支援基金分を含む) |
三菱商事米州財団(MCFA) | 米州における生態系保全、サステナブルな開発、環境正義、環境教育に取り組むNGO・団体に対する支援活動 | 1991年設立 約1,280万米ドル |
三菱商事欧州アフリカ基金(MCFEA) | 欧州・アフリカにおける自然環境の保全活動、自然環境の保全に資する研究や教育、貧困の緩和に取り組むNGO・団体への支援活動 | 1992年設立 約590万ポンド |
当社は、東日本大震災の復興支援活動のために、地震発生直後に当初の4年間を対象として総額100億円の復興支援基金を創設し、被災した地域の状況やニーズに合わせてさまざまな活動を展開してきました。2012年春には、三菱商事復興支援財団を設立し、学生支援奨学金(終了)および復興支援助成金を基金から継承するとともに、被災地の産業復興・雇用創出支援に取り組んでいます。2015年度には、その後の活動資金として35億円の追加拠出を決定しました。従来の活動を継続しながら、福島県郡山市で新たに果樹農業の6次産業化を支援するための「ふくしまワイナリープロジェクト」を推進しています。
産業復興・雇用創出における分野では、金融支援(投融資)による活動を行っています。これは返さなくてはならないお金であるが故に生まれる適度な緊張感が、事業の継続を支えていくことに資すると考えたからです。ただし、通常の融資とは一線を画し、最長10年間、事業が軌道に乗るまでは元本や利子の支払いは発生せず、利益が実現した場合には、その一部を利益分配金として受領する仕組みとしています。この分配金は財団内部には留保せず、地元自治体や他の復興支援の基金等に寄附することや、被災地での復興支援活動に再利用することを基本方針としています。復興支援基金が被災地で循環する仕組みを整え、地域経済のさらなる自立促進を目指しています。
当社は、三菱商事米州財団(MCFA)および三菱商事欧州アフリカ基金(MCFEA)を通じて、環境保全活動や環境に関する教育・研究、貧困問題への取り組みを支援しています。MCFAは、米州における環境問題、社会問題の解決に寄与することを目的とした財団であり、「生物多様性の保全、持続可能な開発、環境正義、環境教育」の4つのテーマに取り組むNGO等への支援を行っており、1991年の設立以来、約1,280 万米ドルの資金援助を行っています。例えば、米国のWildlife Conservation Society(WCS) の取り組みであるアマゾン・ウォーター・イニシアチブへの支援を通じた、アマゾン川流域における漁業環境の改善や野生動物の生息地の管理や監視の強化、気候変動に関する研究等への支援等を行いました。MCFEAは、欧州・アフリカにおける環境・社会課題の解決に寄与することを目的とした基金です。「生態系保全、環境教育、貧困」の3つのテーマに取り組むNGO等への支援を継続、1992年の設立以来、約590万ポンドの資金援助を行っています。現在は、Rainforest Allianceがコートジボワールで行う持続可能なカカオ農業への取り組み等を支援しています。
この奨学金制度は、世界でリーダーとして活躍が期待される、日本の大学で学ぶ海外からの私費留学生の学業支援を目的として1991年から実施しています。2008年からは規模を拡大し、毎年約100名の学生を支給対象とし、2022年度までに累計1,803名に奨学金を支給しました。例年、奨学金の給付と併せ、年に1度、三菱関連施設見学、奨学生同士の交流会や社員との懇親会を実施しています(2022年度はオンラインでの開催)。さまざまな経験を通して、キャリアや日本への理解を深めるきっかけを提供しています。
三菱商事留学生奨学金の他にも、海外各地の大学で学ぶ現地学生への支援として、2000年から「MC International Scholarship」を実施しており、2021年度までに累計約10,000名の学生に奨学金を支給しました。今後も、青少年の育成と次世代のリーダーを育てることを目的に、全世界で、さまざまな支援を続けていきます。
当社は、シンガポール政府系投資会社Temasek Holdingsの100%子会社であるSurbana Jurong 社と合弁で設立したMitbana社を通じて、インドネシアにおける不動産デベロッパー最大手の1社であるSinar Mas Land社と共同で、大規模都市開発案件を推進しています。
本プロジェクトは、ジャカルタ郊外のBSD Cityにおいて、100ha超の新規開発用地に対して、インドネシア初となる公共交通指向型開発(Transit Oriented Development※公共交通機関に基盤を置き、自動車に依存しない社会を目指した都市開発。※)をコンセプトとした、住宅・商業施設・学校・病院・公園・交通結節点等の都市機能を組み合わせたスマートシティを開発するものです。
便利で安全・安心な街づくりを推進するとともに、公共交通機関利用へのモーダルシフトを促し、交通渋滞等の社会課題や大気汚染等の環境問題の解決に繋げる等、経済面のみならず、社会面や環境面へ貢献していくことにより、良質な都市の構築と、持続的な都市価値の向上を目指します。
当社は、2019年12月にHERE International B.V.(HERE社※世界52か国に6,000人以上の従業員を擁するグローバルな位置情報サービスを提供する企業。欧米市場における自動車向け地図データ・位置情報関連サービスで高い市場シェアを有するマーケットリーダーであり、ここ数年の事業変革を通じて、運送・物流・メディア・通信等の幅広い業界にソリューションを提供している。※)と資本および業務提携を合意し、また2020年5月に同社宛に15%の出資を行いました。当社の広範な産業知見を生かし、同社が注力する日本およびアジア太平洋市場、自動車業界以外へのソリューション展開加速において協業を取り進めています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
当社の100%子会社MITSUBISHI DEVELOPMENT PTY LTDは、1968年の設立以来、豪州で資源の採掘事業を行うとともに、地域に根差した活動に積極的に取り組んできました。クイーンズランド州において製鉄用のコークス原料となる原料炭事業を行うBMAを通じて、地域会との共生を目指し一部資機材・サービスを現地中小企業より調達する購買プログラムを実施しています。同プログラムは、地域住民や先住民が営む企業の雇用支援を目的として設立され、年間で約500社を超える企業と取引を行い、約7,000名の雇用を創出しています。また、同プログラムを通じた経済効果は、年間70百万豪ドル超となっています。
当社が取り組んでいる金属資源鉱山事業では、社会・環境との共生を図る上で将来的な閉山計画の策定を含め、責任を持って対応しています。法令遵守をするとともに、行政、地域住民等ステークホルダーとコミュニケーションを図り、適切な閉山計画を策定し、必要なリハビリテーションを行い、社会・環境への負荷の最小化に操業者と共に努めています。
当社は英国資源会社Anglo American社と共に、ペルー共和国においてケジャベコ銅鉱山開発を行う会社(Anglo American Quellaveco社/当社関連会社)を保有しています。
ケジャベコでは、2011年から18ヵ月間をかけて、地域住民との協議を続けてきました。その結果、水資源の共有、自然環境の保護、地域への貢献という3つの分野について、26項目にわたる合意事項を定めました。ケジャベコでは、地域の人々の声を基に作られたこれらの合意事項を軸として、さまざまな地域貢献活動に取り組んでいます。
ケジャベコでは、開発によって地域の人々が必要とする水が不足することのないよう、鉱山操業には、主に農業や生活用水に適さない水を使用します。ケジャベコが位置するペルー南部のモケグア州は、乾季の渇水に悩まされてきましたが、ケジャベコが建設するダムに貯めた水を乾季に供給することで、地域住民の生活改善に貢献することが期待されています。
ケジャベコでは、自然環境との共存も大切にしています。野生動物の餌場/住処の保護や植物の移植/栽培、道路整備や散水による粉塵抑制、開発/操業に使用した水は放出せず全てケジャベコ敷地内でリサイクルする等、操業計画の中に環境保護の対策が組み込まれています。こうした対策の効果については、常時定点観測を行うとともに、定期的に地域住民参加型の環境調査を開催することで、地域住民自らが自然環境が守られていることを確認できる機会を設けています。
ケジャベコは、2018年から開始した開発工事期間中に計30,000名以上の雇用を創出してきました。2022年7月に操業開始を迎えましたが、今後も約2,500名の雇用を見込んでいます。また、鉱山の開発/操業にはさまざまな技術が必要になるため、地域住民の雇用を優先すべく、職業訓練や学生のインターンシップを積極的に行っています。また、女性の雇用機会創出にも力を入れており、女性に特化した職業訓練のプログラム等を行っています。
同時に、地元産業振興のため、開発/操業に必要な物資やサービスの調達に地元企業を優先的に起用し、これまでに4,000社以上の地元企業から累計3.8億米ドル超を購入しています。また、2011年に発足した「ケジャベコ基金」を通じて累計約1,000万米ドルを農業や地場産業の育成に充ててきた他、事業計画や資金調達等のサポートも行っています。こうした支援を通じて、モケグアにおける300社以上の新たな事業の立ち上げに貢献してきました。
また、コロナ禍においてもさまざまな緊急支援策を打ち出しました。マスク/医療用防護服/コロナ検査薬等の物資をいち早く調達して地元に届け、感染者の急増に対応する医療機関を支えるため、救急車・医療用酸素プラントやICUベッド等を提供しました。また、行政によるワクチン接種を支援する活動も行っています。
このように、モケグアではこれまでケジャベコが主体となって、地域の発展支援を行ってきました。さらに2021年には、Anglo American社/International Finance Corporation (IFC)/モケグア州政府/当社/M.C. Inversiones Peru(当社の在ペルー100%子会社)が共同で、”Moquegua Crece”(註:スペイン語で「モケグアの発展」を意味する)と呼ばれる、官民共同で地域全体のサステナブルな発展を促進するための取り組みを開始しました。民間企業/NGO/地域コミュニティ/行政等モケグアのさまざまなステークホルダーが、地域社会の長期的な発展について共通のビジョンを描き、官民一体で実現に向けて協働していきます。具体的には、公共事業の計画・実行管理の支援/地場産業の育成/水等の天然資源の持続的確保や活用に関する仕組み作り等を通じて、モケグアが持つさまざまな可能性を最大限に引き出し、サステナブルな地域の発展に貢献することを目指しています。
当社100%子会社Cape Flattery Silica Mines Pty Ltdは、豪州のクイーンズランド州に位置し、1967年の設立以来、 50年以上にわたり、東アジアおよび東南アジアの需要家に硅砂を供給してきました。現在は世界最大規模の硅砂鉱山として、年間約3百万トンの硅砂をガラスメーカー等に供給しています。
① 先住民との共生
同社が操業するこの土地は先住民が先住権を持っており、先住民団体に対してロイヤリティを支払うとともに、先住民の優先雇用、職業訓練費補助、奨学金支給、地域インフラサポート等を行うことで、先住民との共生を図っています。約100名いる従業員のうち、先住民は3分の1を超えています。
② 自然との共生
同社ではリハビリテーション(原状回復)専属の社員を抱え、採掘済鉱区の植生回復を行っています。その土地に自生する樹木の種子を採取、専用の種苗場で種を植えて育成し、採掘後の鉱区に植栽、3~4年かけて採掘前の植生に戻すことで、自然との共生を実現しています。
これまで植栽したエリアは約3百ha、東京ドーム60個分に相当します。当社は今後とも、この取り組みを継続し、地球環境への負荷を軽減した開発を続けていきます。
硅砂の主な用途はガラス、鋳物、化学品等ですが、環境課題への取り組みが世界的に注目される中、市場のニーズに応え、太陽光発電用ガラス向けの原料供給量を伸ばしています。これは各国にて、硅砂採掘に伴う環境破壊や生態系への影響が問題視され、硅砂採掘制限が課されている一方、環境に配慮した持続的なオペレーションや安定的な品質・数量を供給できる同社の強みが評価されている結果です。今後とも、同社は原料の供給を通じてクリーンエネルギーの発展に貢献していきます。
項目 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
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社会貢献等 | 2,577百万円 | 1,279百万円 | 1,465百万円 |
復興支援※1当社から三菱商事復興支援財団に対する拠出額、および当社の復興支援関連の寄附を示しています。三菱商事復興支援財団の活動については、「三菱商事復興支援財団」の項をご覧ください。※1 | 3百万円 | 70百万円 | 75百万円 |
政治寄付※2政治資金団体宛て寄付等。当社は、企業の社会貢献の一環として、政治寄付を実施しています。政治寄付金額については、3事業年度分の金額推移をサステナビリティ・ウェブサイト等で毎年開示する方針としております。※2 | 30百万円 | 30百万円 | 31百万円 |
合計 | 2,610百万円 | 1,379百万円 | 1,571百万円 |